鈴木理策 熊野、雪、桜

鈴木理策 熊野、雪、桜


東京都写真美術館で見た、鈴木理策の展覧会。
見ていて、これ程引き込まれてゾクゾクする
写真に会ったのは久しぶりだった。
鈴木さんの故郷、熊野の写真の数々。
入って始めの部屋は、森林や滝の緑や
水滴の質感が静かに深い色で表現され、
次の部屋へと続く暗く照明を落とした通路には、
熊野の火祭りの炎が力強く写し出され、
炎の火花が赤からグレー、白へと変化していくと、
雪、桜の真っ白な部屋へと繋がってゆく。
キラキラした光の反射や、グレーの木の陰が、
滑らかに雪の上で踊っている。
桜の写真は手前の花びらが反射して、
まるで雪に埋もれた桜の木のよう。
隣合わせの写真の影や形が繋がっていて、
次の作品、部屋へと移っていく。
全体が美しいインスタレーションのような作品だった。
日常から続いている遥かなる時空...


この写真の静かなゾクゾクが残っているうちに、
もう一度、熊野へ行ってみたいな、と思った。
そして日本にも、こんなに美しくて深い聖地が
あるのだと思うと、嬉しく思う。