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トゥウェルヴ

パティ・スミスの「dream of life」を見た。
写真家のスティーヴン・セブリングが11年間
パティを撮り続けたドキュメンタリー映画。
6,70年代ロックかぶれだった高校生の時、誰よりも憧れを
抱いたのがパティ・スミスとキース・リチャーズだった。
トム・ヴァーレン、ロバート・メイプルソープ、
サム・シェパード、ジム・キャロル、ボブ・ディラン、
ウィリアム・バロウズ、アレン・ギンズバーグ..
パティ・スミスの回りには私が強く心惹かれていたもの全てがあった。
音楽だけではなく、詩、美術、写真、文学、演劇、様々な表現が
渦巻くNYに、里子に出した子供を残し、退屈な工場の仕事から
抜け出し、田舎から僅かな小銭を握りしめてやって来た、
ピカソ青の時代の絵に出てくるようなスレンダーな女の子。
素晴らしい「Wave」を発表した後、MC5フレッド・スミスと結婚し、
迷わず引退をした彼女に心服した。

田舎に暮らす父と母に会いに行き談笑する様子、
撮影を始めてまもなく密着したカメラを追い出す場面、
小型飛行機の中で尿をした..と友人と楽しそうに話す様子、
息子がツアーでギターを弾き「父親そっくりだ..」と
つぶやく場面や、娘がピアノを弾く姿。
ボブ・ディランのDon't LookBackを語り、
NYの自宅で、メイプルソープの遺骨や21才の誕生日に
手作りされ贈られたタンバリンを大切そうに手に取る様子。
サム・シェパードとは時が止まったように
ギターを弾きながら一緒に歌い出す。
デ・クーニングの絵を初めて見た時思わず触ってしまった..
と語りながら絵を描き、写真を撮る。

そして数々のライブ映像。レニー・ケイのギターは
変わらずソリッドな音でカッコイイ。
沸き上がってくる言葉の数々。。Horses..
Gloriaを歌いながら「私には夢があった。それなのに
ジョージ・W・ブッシュを生み出してしまった。
新しいジェネレーション立ち上がれ！」と強い言葉で
デモに参加する様子。

あれから色々な音楽を聴き、いつの間にかロックからは
足が遠のき、「Dream Of Life」後のライブを見たのを
最後にパティ・スミスの事は追わなくなっていた。
この映画を見て久々にパティの表現に触れ、
変わらず"今"を表現するアーティストの姿を見て
涙がこぼれた。。

パンフレットに寄せた町田康の言葉はとても印象深かった。
「...同時代に同じように考えて活動し行動した人の
多くが死に、或いは、ロックや現代詩のごとく芸事に堕して
無惨に生き恥をさらすなか、なお、他に、すなわち人間そして
世界に本気で何事かを言い続け死なず、その結果の自らが
削れることを肯定的にうけとめているようにみえるパティ・スミスの
喩に充ちた映像は確かに確かに神聖であった。」

http://www.pattismith-movie.com/