川崎市民ミュージアム「写真ゲーム」展で、折元立身さんの
トーク・パフォーマンスがあったので行って来ました。
折元サンの作品は、今まで色々な場所で目にしていたけれど、
本人のトークを聞いたのははじめて。


東京マラソンに行かず、わざわざこちらに来てくれてありがとう!
という言葉から始まったトーク
「処刑-パン人間」の写真作品を日本のギャラリーに持って行った時に、
日本では通用しない...と、どこに行っても受け入れてもらえず、
ドイツのギャラリーに持ち込んだところ、何でもっと早く
持って来なかったんだ!と即座に展覧会が次々に決まったという。
マネなどの古典絵画に出てくるパンがずっと気になっていて、
人間とパンを合わせたパフォーマンスを行うようになって、
それを写真に納めるようになったと話していた。
川崎市民ミュージアムで「処刑-パン人間」を発表した時、
イラク戦のまっただ中で、日本のメディア中に絶対にタブーと言われ、
NHKで決まっていた放映も、上の許可が下りず放送中止になったらしい。
日本の場合、アートという表現をする場にもかかわらず
戦争、政治、SEX、麻薬などの表現は絶対的にタブーで、
アイデンティティを持った表現は邪魔物扱いされるけれど、
逆にヨーロッパや他のアジアの国に行くと、それが明確にされて
いないとダメだ..という言葉を聞き、今だにそんな事を言う
日本のギャラリーやメディアがいるんだ..と
思うとやりきれない気持ちになった。
イラク戦の時の「殺すな」デモの時も感じていたけれど。。)
折元サンの作品の場合、写真でも絵画的な要素も強いので、
日本の写真界では、写真という扱いもされないらしいけれど、
ヨーロッパでは、普通の写真ギャラリーでもその辺りのボーダーが
なくなってきて、自由にリアルな表現がされているらしい。


サンパウロの美術館で500点以上の作品を出展している
大展覧会をしているらしく、100件以上の日本のメディアに
案内状を送っても、帰って来て迎えてくれるのは、ばあさんだけ..
と話していた。



サンパウロの路上で、子供に飴をあげたら\10で売ってくれたという
かわいらしい毛糸の指人形と、自身で紙粘土で作ったパンク指人形を
つけてのパフォーマンス。アルツハイマーうつ病を患ったお母さんとの
ポスターの前で行われたパフォーマンスに、今を生きている強い
エネルギーをもらった気がした。
61才の折元サンが言う、毎日美味しいフレンチを食っているような
ヤツからは生まれてこない、貧しい日常生活から生まれてくるアート..
「日本のメディアは無視〜そんなの関係ねぇ〜」とおどけてみせる姿に、
本当にガツンとやられたトーク・パフォーマンスでした。



回転回の屋代サンの、博物館やフランスの城で
自身が床に寝転がって回転している作品も、
恵比寿で見た作品と違った感じで、面白かった。
写真とドローイングが一体化した城田圭介さんの作品や、
ヘルシンキから日本に住む友人に向けて書いた手紙を
ヒントに古本屋を巡り、一行について解いていく過程を
写真とビデオに納めた三田村光土里サンの作品が良かった。
日本でも写真と現代美術の表現のボーダーが
もっと無くなれば面白いのに、と強く感じた展覧会でした。