原美術館で見たピピロッティ リスト からから 展。
スイス人の女性アーティスト。
ギャラリーに入ると、地球にろうそくが刺してあったり、
クルクルと星や惑星が回る映像が、天井から床に映し出される。
しばらく見ていると、大きな口を開けた人に飲み込まれていく。
2Fからも見下ろせるようになっていた。
「星空の下で」


次の部屋に向かう床に、小さな穴が開けてあって
(美術館の壁というのはよくあるけれど、床に穴!!
よく許しが出たな..と思った。)小さなモニターが入っていて
炎に包まれたリストが「Help!」と叫んでいる映像。
「溶岩の坩堝で我を忘れて」


廊下の壁には救急箱が掛けられていて、
その側面で見る小さなモニターには、
赤血球の流れが赤々と映し出されていた。
「ヒーリング」


次の部屋には、プラスティックや発砲スチロールのゴミが、
天井から吊られた枝木に下がっていて、壁に映し出された
青や黄のぼんやりした光の映像に、影絵のように美しい形に
投影されている。時折オレンジに変わる光にハッとさせられる。
リストが言う、まさにイノセントコレクションな
キラキラした美しい森のような映像。
「ダイヤモンドの丘の無垢な林檎の木」


大きな赤いソファーに座り、巨大TVリモコンで
チャンネルを選ぶ作品。日常生活での、物の大きさの感覚が
分からなくなり、色々な人物の映像がカットアップされる。
「部屋」


レトロなパッチワークカーテンの奥にある椅子に座ると、
自分の膝あたりに、森の緑や花の映像が映し出される。
よく見ると脇にあった電気スタンドの中にあった
モニターから映像が映し出されていた。
小さな安心感がある作品。
「膝ランプ」


2Fの階段を上がると、枝に吊るされたしずくの形に
拡大された皮膚が映された作品。
ジーナのモビール


運搬の時、作品を守るために使う木箱で作った
リスト自身の部屋?のようなミニチュアの
小さな部屋の半分が、巨大惑星に破壊され、
箱の中を彼女の家族の映像が映し出されている。
「あなたの宇宙カプセル」


バスに乗り、スーパーに行って長い時間ぶらぶらし、
自分の部屋に戻るリスト自身のアップ映像の額に、
森の中を裸で走り回る男女の映像が、小さく重なり合う。
まるで妄想を合成しているような2つの映像。
「あなたに大賛成」


水色のドレスに真っ赤な靴を履いて
軽いステップをしながら街を練り歩く女性が、
道に駐車してある車のサイドガラスを、
長い花を棒にして(まるで金属バットのように)
次々と叩き割っていく。
女性警官もにこやかに過ぎて行く。
印象的な鼻歌が頭の中をクルクル巡る。
ベネチアビエンナーレで注目された作品。
エヴァーイズオーヴァーオール」


静寂さと暴力的、優しさと激しさ、
人工的な物と自然、毒々しい原色と安らぎのある緑、
奇妙なバランスで、新たな映像の見せ方で表現されている
彼女の作品にすっかり虜となって引き込まれていきました。
これ程面白い!と思える作家に出会ったのも久々。
作品で使われている音楽がとても印象的だったので、
元々ミュージシャンのデザイナーだったという経歴を見て納得。
あまりにも長蛇の列だったので見られなかった、
トイレの中の作品「隠れたサーキット」が
どんな作品だったのか気になります。


カタログは、リスト自身の映像のポスターが数枚と
インタビューが長い缶に入った、面白い形状でした。
デザインがサイケデリックすぎて、作品のイメージと
違ったので購入しませんでした。
でもデザインはスゴクかっこ良かったです。