トーマス・デマンド アーティストトーク覚え書き

ベルリンとロスに在住。デュッセルドルフで彫刻、ロンドンで写真を学ぶ。コンストラクティッド・フォト。リアルスケールで紙へ。今回30点の作品を出展。

長い間スタジオに籠るのはゴメンだった。お金がなかった。ボール紙素材作品を半日ぐらいで作っていた。コカコーラのボトルケース、戸棚、段ボールBOXなど。脆い、儚い、紙を紙で表現ー写真へ。カメラの性能も悪かった。画面が歪んでいる。作品の脆さを表している。

作って写真を撮るとストーリーが出来る。目の前のものより記憶の中に残っているものを再現。他の人が撮ったイメージが自分の頭の中にある。自分のものとして再構築。


階段にあった瓶を男性が割ってしまった作品。中国の清の時代から伝わっていた貴重な瓶。目に見えないものを収める写真(ミルク王冠など)美術館は事件がないものにしていく。瓶を修復再製。デマンドはその事件を作品で再現していく。ヨーロッパでは傷の継ぎ目を無くしていく。日本は金継ぎなど継ぎ目が見える技法がある。壷のかけらの分散の仕方を再現。世界中で15分間凝視するような有名な写真になった。瓶が地面に衝突した。ランニングと言っている。

大統領執務室の作品。選挙の3週間前に依頼を受けた。アーカイブ画像6,000枚を2日半集め続けた。デマンドの作品が抽象的な要素が強いと言う事で依頼された。ひとつの党に依存しない。同じフレーミングでもその時々の政治的なものを読み解く事が出来る。ケネディーミサイル、キューバ、ブッシューママがおやつを買いに行ったのを見ている写真など。執務室でゴッドファーザー的な存在の大統領。リアルとフィクションとの節点が執務室。2週間半で作った。コレクターすらデマンドの作品と気づかなかった。NYタイムズがネタ元。一から私が作品を作るように、誰かが私の作品を元に作品を作ると思うとワクワクして面白い。


CCD監視カメラ。固定カメラで撮っている。ハリウッドの会社に依頼。椅子を作るのに半年。板紙、ボール紙、脆いもので作る。肘掛け椅子。ランチトレイ、レモンなど大量に同じものを作る。モップを運ぶトローリングは事件映像に無かったものを入れた。車輪付きなので他のものと動きが違う。2,400個のものは動きが決まっている。表をアニメーターが作る。波の動きの特徴。毎秒/24フレーム。北朝鮮のアニメーターの人材の需要は高い。ハリウッドのアニメーター絶滅の危機。ロスの地震が多いので迷惑だった。物がずれるので戻さないといけない。プロのアニメーターは抽象的に物を捉える力がある。

福島のコントロールルームの作品。語られてないものはあるのか?私達が共有化しているもの。私達が出来る事はイメージを元に語って行く事。私達に代表的に焼き付いているイメージ。事件の画像。本当に心を揺さぶったものは?命を落としたかもしれない人達が残したイメージ。強烈なイメージ。当事者達が作っている。私達に影響を与えている。福島の制御室。メルトダウンを食い止めようとした人達に尊敬の念を入れた。天井が崩れ落ちていた。人の手で作られた天そのものが崩れ落ちている。美術館は、社会の中で語る事が出来ない事を語り考えていく場所。答えは政治家が出す。アートは考えるきっかけを提供する場所。


「実際起きた事は写真に残す事は出来ない。それを残したい欲求があるのか?」バルトの理論。時間と死。失われてしまった時間。時間を巻き戻す事が出来るかもしれない。当事者じゃないのに体験出来るかもしれない。記憶は薄らいでいく中で、経験してない事を自分の中で蘇らせ記憶の中にインプットしていく。

「パシフィック・サン」映像を作るのと同じぐらい音にかけた。プロジェクターの音。エスカレーターの装置のループ。「レイン」本当の雨音が変だったのでフライパンで卵を焼いている音にした。音を付けるとお膳立てされ違う。サイレント。Flying Lizardsのデビッド・カニンガムに音を依頼。カビたオレンジをボール箱で転がす音。

「作品に人が出てこないのは何故?」必ずいる人は一人、私自身。キリスト教カトリック十字架、プロテスタントはキリストの苦しむ姿はない。どちらも表層の違いでしかない。どちらが優れていると言えない。

http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/134/


展示の感想はあと一度見てから書く事に。久しぶりに長谷川祐子サンのギャラリートークを聞いた。私が昔毎回行っていた時より格段に分かりやすい伝わりやすい言葉を選んでいた。長年一緒の通訳の人にもそれを感じた。キャリアってああいう事なのかと思った。長谷川サンがデマンドキュレーションするのは意外だった。


毛利悠子サンのブルームバーグ・パヴィリオンでの展示「サーカス」柔らかな光の中で様々な音が動き聞こえてきて面白かった。夕暮れ時や雨の降る日にも訪れてみたい、部屋の光と作品の調和が印象的な空間だった。