今年もきちんとブログが書けなかったので、見たもの聴いたもののベストを書いてみようと思う年末。


美術作品ではひとつの大きな展覧会ではなくて、妻有トリエンナーレで見たヘンリク・ハカンソンの作品。妻有の作品の中でもかなり山奥に設置してあったもの(携帯の電波0だった)。掘建て小屋を上がるとベンチにヘッドフォンが設置してあって、それを聞くと周りの自然の音を拾い、不思議なディレイ音と共に耳に入ってくるという作品。ちょうど着いた時に雷が鳴っていて、今にも雨が降り出しそうな山間を眺めながら、ヘッドフォンから聞こえてくるバキバキの雷ディレイ音は本当にエキサイティングだった。あのタイミングじゃないとあの音は体験は出来なかった..と思うと作品そのものと鑑賞する時間との関係を考えさせられた作品だったと思う。帰ってきてどんな作家なんだろうと調べてみたら、カエルの生態系から作ってテクノDJでカエルを踊らす作品とか、PAシステムを使ってコオロギが演奏する作品とか、とてもユニークな作品を作っている人なんでまた日本でも作品を発表してほしいなと思う。
http://www.muse.co.jp/newlife/artist/henrik_j.html





二つ目は、原美術館ウィンター・ガーデン展」で見た八木良太サンの「VINYL」。アナログレコードをシリコン樹脂でかたどって、その型に水を入れて凍らせた氷のレコード作品。私が行った時は確か月の光かノクターンをかけてくれて、その氷のレコードに針を落とすとちゃんと音が鳴る!というのにビックリしたけれど、何度も回転する毎に氷が溶けて音がフニャフニャと変化する様子がとても面白かった。永遠の音はない..という事を視覚的に気づかされた作品だった。この時の松井みどりとの対談が印象的で、松井サンが心底リスペクトしている愛情が伝わってきた。


その他、国立国際美術館で見た「杉本博司 歴史の歴史展」での中沢新一×杉本博司の対談。椿昇×後藤繁雄「アートを始める前にやっておくべきこと」のトーク。GPギャラリーでのStephen Gillの来日スライドショーと、竹内万里子サンのスティーブンショア解題は、写真表現の面白さが何となくやっと分かったと思えたものだった。


twitterでtwitしたトヨダヒトシさんのスライドショーも残しておこうと思う。。横須賀美術館で見たトヨダヒトシさんのスライド写真展。旅先で出会った人逹の写真。ヨーロッパやアメリカ、日本の山奥のアーミッシュ、檀家を持たず自給自足するお寺、ホームレスだった人逹が始めた農園、そこから去った鬱病を患う人、病気で亡くなった友人、街と暮らし、自然と生死が交差する写真。スライドの中の印象的な言葉。川は何故曲がりくねっているのか‥真っ直ぐの方が効率が良さそうなのに‥まっ直ぐだと河や土地が死んでしまう‥。空中から撮る曲がりくねった川の写真。トヨダさんが最後に話していた、コペンハーゲンの人魚姫の像の写真。好きな人を思い続け、相手にナイフを向ける事も出来ず、涙を流さない人魚姫が涙を流しながら、海へ泡となって消え死んで行く話し。音も無くスクリーン上で静かに過ぎていく、トヨダヒトシさんが旅先で出会った人逹の日常が、私の中に足跡を残した。。夜空の下、海を眺めながらの鑑賞。途中どしゃぶりが降ってきて急遽室内での鑑賞になったけれど、どちらも味わえて逆に面白かったな。80分という時間を感じなかった。


今年一番は何と言っても水戸での大友良英サンの「ENSEMBLES ワークショップ」。これに参加した後で、音を聞く耳が変わったように思う。これについては後日改めて書こうと思う。