メディアセブンでのトークセッション「本のあつまるところ」
都築響一サンのレクチャーを聞きに行って来ました。

川口と言えば、西川口のイメクラには以前よく取材に
来ていたんだけれど、いつの間にかオシャレな街になって..。
本の話しを。。学校の課題図書「みんなが読むから読め!」的な
暗黙の了解、教養をつけるためのイメージ。
書店の片隅に、ベストセラーにならないような本の良さ。
何冊も作らないと生きていけない。何年たっても印税数十万円。。
から始まった久々に聞く都築サンのトーク
以下覚え書き...


今作っている本、青森の「ボロ」。野良着、かいまきなど一番貧しい農民が着ていたもの。どんなはぎれでもつけていく。マルジェラみたい。ザクザク刺し子、厚さ10cm、20kgぐらい。昔は青森は僻地。綿栽培は福島まで。南(九州)にも綿がある。どんな土地でも育つ麻を栽培。何重にも重ねつぎはぎ、3世代に渡って使う。そうやって使い古された布を、米のとぎ汁につけて糸を抜き再び再生。明日のご飯もない人たち。再生し使えなくなったものを、最後に縄状にして頭に縄を巻き、ゆっくり燃やし虫除けにする。地面から生まれ地面に還る。40年かかって集めたおじさんがいた。美しさの生まれ方。現地の人は恥ずかしがって、当時の物は捨てていた。一番辛いものは寒い事。着る物がない事。食べるものは分け与えしのげる。「今晩の寒さを何とかしたい。」という思い。今は麻はカッコイイ的な風潮がある。一流デザイナーに勝つもの。直感が失われていく美術館や一流ブランド。


「刑務所良品」での取材。人と同じものを作りたい。違うものではない。全て並べてみるとパーフェクトな日本が出てくる。一番普通のもの。現代日本。救急箱は日本だけ。家具、畳バッグ、石刺身皿、「獄」エプロン、石でできたカップヌードル押さえ\500。元帝国ホテルシェフの作る刑務所での食事。無期懲役囚には様々な職種のスペシャリストがいる。G5、アドビCS3を操りデザインするおじさん達。


全国のスナックの中で27万件ある名前「ライムライト」。アサヒカメラで連載。「東魅酒乱」アミシュランの面白いママ。スナックは全国どこに行っても酒も一緒、食事も、インテリアも一緒。歌上手や軽快トークのママのキャラで勝負。全国のスナックを行脚し、働きながら写真を撮る山田直子サン。


フランクフルトのブックフェアで見つけた旧ソ連の地下出版物。革ジャンでぶ兄ちゃんが売っていたロック地下出版物。ツェッペリンの会報。コピーや機材がない時代、カーボンで複写し、写真をまた写真で撮り貼り合わせ、思いっきりタイプを打ち、やっと出来る数が5部。DTP機材でゴチャゴチャいうのははずかしい。迷ったら指で思いっきりタイプを打てばいい。最底辺だけれど一番ドキっとするもの。


昔のエロガリ版本、元の絵を全部なぞってワラ半紙にガリ版する会社員。限定1,000部はそれしか版がもたない。


レディコミ"AmDur"のレイアウトのスゴさ。イラレで5重レイヤーぐらいで作っているような迫力。macは使わず全て手作業。写植を出してもらい、コピーする時に動かしフォントを歪まし、トレペに貼る。カッコイイフォントがなかったら、コピーでチチッと動かす。オシャレデザイナーにはできない。満足な機材がなくても、自分の中にビジョンがあれば何でもできる。


西池袋のトルマリンブレスを売る会社。自分でDTPソフト買って広告のレイアウト。アメリカ、中国など色々な場所から送られてくると言い張る、それを身につけると上手くいくバリの写真。金ベッド両腕に美女。行間なし、文字小さいのレイアウト。嘘の話しでも読ませたい。欲望と金儲けのデザイン。


手作りカメラ、チェコアウトサイダーカメラマン、ミロスラフ ティッシー。元洋服仕立て屋。精神に異常をきたしホームレス。カメラが買えないので手作り。望遠レンズは筒。印画紙は切れ端の安い物。アルルの式で受賞、ドイツで展覧会。東京のギャラリーでは売値100万円。ブリキの缶をランプに引き伸ばし機に。7,8年やっている。デジカメ解像度なんて言ってられない。「思いの強さ」どれだけ出来るか。人の言うことを聞かないこと。


アラスカにいた時、台湾の93才中華料理コックさんを知る。日本のグラビアを切り抜き、素材別の箱へ入れ、スクラップブックを作る人。元々ある雑誌に貼っている。


アメリカ黒人。ボール紙でジャケ、レコード盤手作り。一人レーベル、自分しか聞けない。家賃払えないので、のみの市へ出す。音楽マニアに見つけられ話題になる。偶然が偶然を呼ぶ。


本の定価8-10%の印税/3,000部。2年で60万円。案は100冊に1冊しか実現しない。世界で本を一番作りやすいのは日本。


愛知でトヨタのディーラーをしているアマチュア写真家「ロマン汽行ー汽車と乙女たち」島尻武史サン/BeeBooks。個人出版で作るとで100-150万円かかる。アマチュア写真家の写真集には、2・300冊に一冊スゴイのがある。90%の人は自然、機関車、女、子供、犬、猫などを撮っている。とめどころを知らないところがスゴイ。アマチュアの面白さ。汽車と茶摘み娘、手を振るモデル、水着姿、桜など。。イギリス出版の写真集参加をお願いすると、自分がお金を払うと思った。「俺のネガは高いよ」と言われ、\4,500はかかるという相手の言葉に、\15,000払うと言ったら驚かれた。スナック広告と同じ。ママが雑誌掲載あやしがる、お金を取られると思う。


美大中退作家でサラリーマンの村川シゲさん。「KYRIE.ELEISON/キリエ・エレイソン」聖書の世界表す。「主よ、あわれみたまえ」モデルが寝てるだけのショット。死が近づいたイメージ。自然の中、女の子がスニーカーで右の頬左の頬をぶたれている。間違いがすごい。本人は分からないから見返りがない。分かってしまったら撮れない。アマチュアはだから走っていける。褒めると本人はすごいか?と当惑する。


関西TV探偵ナイトスクープの初期。世田谷生まれのドリャーのおじさん。東尋坊23m飛び込み。当時48才斉藤さん。男のロマン。1万回目標をたて2万回達成、3万何千回達成した後、重度のヘルニアになり、飛び込めなくなったら人生終わった。その後、滋賀の健康ランドで健康になった。現在60代。。大竹(伸朗)サンも扱いづらい存在。タワレコに行ってカゴに沢山CD入れてみたい。コンセプチュアルじゃない。ドリャー系。ドリャーおじさんみたいな本づくり。崖の上に立つ時、危険かもしれないけれど、飛び込んでみたら面白い。「ドリャー」の声を思い出す。



ずっとDTPの仕事をしてきて、印刷物を作る過程で
いつの間にか、あのソフトじゃなければレイアウトできない、
文字組と行間と写真のバランスは..などとマシーンや
見た目のキレイさにあまりにもとらわれすぎていたな..と
都築サンの話しを聞いて思った。
デザインをする事は自由な事なのに、時間に追われ
作業する中で、発想がいつの間にか型にはまったものに
なっていたな..と離れた今なら思う。
カッコイイだけじゃない芯のあるリアルなデザイン。
どの話しもとても面白かったけれど、青森の「ボロ」や
ミロスラフ ティッシーには、得に衝撃を受けた。
高校生の頃、好き!という思いだけで、音楽ミニコミ
作っていた時の感情を思い出した。
「迷ったら指で思いっきりタイプを打てばいい。」
「カッコイイフォントがなかったら、コピーでチチッと動かす。」
を頭の片隅に置いて、久しぶりに印刷物を作ってみたいな..と思った。